年金問題のポイント | 再生日本21


年金問題のポイント

いま世間を賑わしている「年金問題」。しかし、ただ報道を追っているだけでは、問題の一部しか見えてきません。そこで、「お金の使い方」「仕事の中身・やり方」「制度・システム」の3点に絞って調べてみました。この3点を考えることで、年金問題の本質が見えてきます。

めたお金のムダ遣い(年金資金の使い方の問題点

年金問題を考える上で最初のポイントは、“ムダ遣い”です。まずは社会保険庁が年金を流用してきた全体像を見てみましょう。
年金ムダ遣い
※1年金健康保険福祉施設整理機構が現在、施設の売却・処分を進めています。
「年金健康保険福祉施設整理機構ホームページ」 http://www.rfo.go.jp/index.php

◆本来は「事務費に利用」のはずが・・・

社会保険庁職員は国家公務員なので、給料や業務に関わる費用は税金で賄われます。国の財政事情の悪化による特例措置として、1998年から、人件費や事務費に年金資金を充てるようになりました。 ところが社会保険庁職員は、その特例措置を拡大解釈し、出張費や交際費、公用車代、宿舎家賃などにまで安易に年金資金を利用していました。さらに、ゴルフ道具代や映画鑑賞代、研修施設など「職員の福利厚生」にも流用、国民から批判の声が上りました。

◆福祉施設建設は誰のため?

国民年金法、厚生年金法には、「加入者の福祉増進のため必要な施設を建設することができる」という条文があります。この条文を根拠に「グリーンピア」や「年金会館」などの「福祉施設」が全国に建設されました。政治家が地元への利益誘導のために、特別会計の年金資金を利用したとも言われています。 一方で社会保険庁職員は、福祉施設やその運営主体となる行政法人を、天下り先としたい思惑があったようです。こうした政官癒着の構図が、問題を根深くしているようです。

◆チェックの甘い巨額資金

年金特別会計予算は40兆円にのぼり、国の予算(一般会計)の半分もの額に匹敵します。さらに、給付に余裕を持たせるための積立金が150兆円あります。つまり社会保険庁だけで、国の予算以上の資金を管理・運営しているのです(資金運用については、年金積立金管理運用独立行政法人http://www.gpif.go.jp/が担当)。 特別会計は一般会計に比べてチェックが甘いことが以前から指摘されていました。巨額の資金を扱っているうちに、「この程度ならいいだろう」と、職員の感覚がズレてしまったのかも知れません。

国民年金・厚生年金特別会計

収入 43兆8323億円
(保険料収入22兆0064億円、国庫負担金6兆2414億円、積立金取り崩し分6兆7034億円など)
支出 43兆8323億円
(給付金36兆5775億円、人件費・事務費・施設運営費等4兆5843億円など)
積立金 150兆231億円

国の一般会計

歳入 89兆2億円
歳出 85兆5195億円

※ 社会保険庁「平成17年度決算」および財務省 「平成17年度決算の情報」をもとに作成

社保庁のココがいい加減(社会保険庁職員の仕事の問題点)

現在問題となっている「5000万件記録漏れ」など、社会保険庁の“いい加減”な仕事ぶりが問題の中核にあります。6つのポイントに絞ってみてみましょう。

1.納付したのに記録がない?!

納付記録
年金納付記録をコンピュータで一元管理するために、1997年には「基礎年金番号」制度が導入されました。これまで手書きで社会保険事務所ごとに保管されていた記録も、すべてコンピュータで統合したのです。

しかし、もとの記録に「名前」や「生年月日」が抜けているなどの不備があったり、コンピュータに「フリガナ」などが間違って入力されるなどのミスが相次ぎ、誰の納付記録かわからないデータが大量に発生しました。

統合されないまま放置されているデータが5000万件で、これはすべてのデータのおよそ6件に1つにあたるということです。

2.支給額を間違えた?!

支給額を間違えた?!
年金は納付記録を元に、給付額が決まります。しかし、納付記録統合の不備で、本来もらえるはずの額より少ない給付を受けているケースがあります。

2001年から2007年の6年間で22万人の、給付額変更がありました。しかしそのほとんどは、給付を受ける側の指摘を受けて、社会保険庁が調べ直した結果、発覚したものです。

また、納付記録が見つからず、給付額変更が認められないケースがあります。この場合、社会保険庁側は、(領収書や通帳の振込み記録など)「納付した証拠を提示すれば、訂正する」としています。

しかし、年金納付の記録は40年にも渡るもの。受給者側が、その証拠を自分で探すのは容易ではありません。

社会保険庁職員の不備であるのに、受給者側に負担を強いることに対する批判もあります。

そのため、納付記録がはっきりしない場合に給付額変更を認めるかどうかを判断する、第三者機関が設置される予定です。

3.データ入力にもミス多発

データ入力にもミス多発
1984年から、納付記録のオンライン化が進みました。手書きの記録の中には、名前のフリガナが記されていなかったり、生年月日欄が空白のままのものがありました。

このときにフリガナを本人に確認しなかったため、読み方が複数ある姓や名前が間違って登録されるケース(例:「山崎=ヤマサキ」が「ヤマザキ」になったり、「幸子=ユキコ」が「サチコ」と入力されるなど)があるということです。また、単純にデータを入力する際に、打ち間違ったケースもあります。

およそ3000件のデータを抽出して調べたところ、30数件の入力ミスが見つかりました。全体ではおよそ数十万件の入力ミスがある計算になります。

4.見せかけ納付率アップの裏ワザ?!

見せかけ納付率アップの裏ワザ?!
国民年金の納付率低下を受け、全国の社会保険事務所に「納付率アップ」の大号令がかけられました。しかし職員が未納者に督促状を送り、自宅を訪問するなどしても反応がなく、なかなか未納金は回収できませんでした。

納付率の計算式は、納付者の数が増えなくても、納付免除者数が増えれば見かけ上、納付率が上がることになります。そのため、未納者本人に確認を取らないまま、「免除者」手続きをして納付率を上げる不正が、全国116事務所で計22万件以上行われました。

06年の通常国会で、社会保険庁改革である「ねんきん事業機構法案」の審議中に、この「不正免除問題」が発覚したことで、審議がストップ。同法案は廃案となりました。

5.仕事ぶりがいい加減?!

仕事ぶりがいい加減?!97年のコンピュータ導入の際、「労働強化につながる」「効率化は人員削減につながる」といった理由で労組が反対。100項目にわたる覚書が幹部と組合員の間で交わされました。 経費をかけて導入したコンピューターをあえて使わないでいた、という事務所もあったようです。


仕事ぶりがいい加減?!2民間企業から多数の個人情報が流出した問題を受け、個人情報保護法が03年に成立。個人情報をどう扱うかが問われている中、04年に社会保険庁職員による、「個人情報の業務外閲覧」が多数発覚。公務員の個人情報に対する意識が問題視されました。


仕事ぶりがいい加減?!3不正免除問題などを受け、社会保険庁が全国の社会保険事務所に対し、「事務処理ミスの報告」を徹底するよう通知。しかし、その後の調べで、ミスの半数近くを隠していたことが発覚しました。

6.天下りはお手のもの?!

天下りはお手のもの?!
国民年金法には、「被保険者の福祉を増進するため、必要な施設をつくることができる」という条文があります。 これを拡大解釈して、政府や社会保険庁は全国各地に福祉施設名目でホテルやスポーツセンター、リゾート施設を多数建設しました。

地元の要望に応えたい政治家と、「天下り先」を確保したい社会保険庁との思惑が合致した「政官癒着の実態」ともいえそうです。

なお、現在ある施設に関しては、基本的にすべて譲渡・廃止・売却する方針が決定しています。

年金制度のヘンな仕組み(年金のシステムに関する問題点)

ここでは年金問題のシステム自体の矛盾を探ります。 「不公平感」「制度の複雑さ」「赤字体質」の3つから見ていきましょう。

『不公平感を生むカラクリ』

1.世代間の格差

世代間の格差
世代間の格差2
現在の老齢者は、高度経済成長を前提とした時代の年金制度で給付を受けています。そのため、現在よりも高い水準で給付を受けている人が多いのです。景気のよい時代に現役世代だった人は、資産の蓄積もあります。現在では、高齢者ほど資産の蓄積が高くなる傾向があります。

また、公的年金は賦課制度(現役世代の年金保険料で同時代の年金給付をまかなう制度)のため、若者が多く老齢者が少ないほど、納付負担金が減ります。ところが少子高齢化が急速に進み、納付金と給付金のバランスが崩れてしまいました。

これからは年代が下るほど、負担が増えて給付が減ることになります。そのため若い人ほど、年金に対して不公平感を抱き、納付率が低下する原因ともなっています。

2.職業間の格差

職業間の格差
年金はもともと、船員保険、農林漁業団体、地方公務員共済など、職業別に細かく分かれ、それぞれ別々に運営されてきました。

現在は年金の統合が進み、厚生年金と共済年金も統合される予定です。ただ、共済年金加入者の「職域加算」の差はそのまま残るとみられています。 また、フリーターの場合、収入に占める国民年金負担の割合が高く、相対的に負担が重くなります。

正社員の場合は厚生年金なので給料天引きですが、パート、アルバイトの場合は自分達で納付手続きをしなくてはなりません。フリーターの増加も、国民年金納付率の低下につながっているようです。

『フクザツな仕組み』

1.年金未納問題が起きたワケ

年金未納問題が起きたワケ
04年、当時の閣僚を含む国会議員の「年金未納」が問題になりました。 この背景には、法律を扱う専門家であるはずの国会議員でさえよく分らないという、制度の複雑さがあります。

サラリーマンから独立開業し、その後また企業や公務員に再就職するなどした場合に未納期間が発生するケースが多いようです。

さらに、年金制度は、そのときの社会状況に合わせて毎年のように変わります。また、およそ5年に一度の割合で全体の見直しを行うことが法律で決まっています。 制度変更の境目にある場合には、給付や納付の特例措置等があります。そのため、特例措置が適用されるかどうか、現行制度だけでなく、変更前の制度までさかのぼって調べなくてはならないのです。

2.モデルケースの破綻

モデルケースの破綻
モデルケースの破綻2
これまで年金は、「サラリーマンの夫に専業主婦の妻」という家庭をモデル世帯として、制度をつくってきました。このモデル世帯に当てはまる家庭であれば、年金である程度の生活ができるような給付にしてきたのです。

しかし現在では、終身雇用が崩れ、雇用の流動化、共働きや離婚など、ライフスタイルが多様化しています。そのため、モデル世帯に当てはまらない世帯が増えています。

政府は、さまざまな人生に対応するため、制度に多くの例外規定を設けました。このことが、年金の仕組みを分かりにくくしている原因とも言われています。

3.基礎年金導入の真相

基礎年金導入の真相昔は年金は、職業ごとにそれぞれわかれて運営していました。

サラリーマンが増えて厚生年金加入者が増える一方、自営業者や農家中心だった国民年金の加入者が減りました。

そのため、国民年金は運営が苦しく、破綻の可能性もありました。

そこで、救済策として、国民年金をすべての年金共通の「基礎年金」と位置づけ、その上のプラスαとして厚生年金、共済年金が乗っている形に制度を改めたのです。

給料天引きの厚生年金、共済年金は資金に余裕があったため、もともとの国民年金加入者の不足分を穴埋めしている形になっています。

将来的には、厚生年金と共済年金も統合する方針です。「民間と公務員の年金格差是正のため」とされていますが、これも「共済年金の運営難を救うため」という意見もあります。

『年金が財政危機を加速する?!』

1.年金資金が公共事業に?

年金資金が公共事業に?
これまで政府は豊富な年金資金を、一般会計よりチェックの甘い財政投融資として、公共事業に注ぎ込んできました。

国債や地方債も、年金積立金の主な運用先です。これらは国や自治体の借金ですので、最終的には、税金で穴埋めされることになります。

つまり、年金積立金が増えれば増えるほど、国や地方自治体の借金が増える構造になっているのです。

2.社会保険庁職員はコストが高い?

社会保険庁職員はコストが高い?
年金も税金と同様に国民負担であることから、徴収する組織を統合してコストを削減しようという構想があります。

税金と同様に厳しく徴収することで、納付率の上昇も見込めます。

また、05年度から始まった業務の民間委託テストでは、2年間でコストの6割が削減され、年金保険料の徴収率も上がりました。

社会保険庁は2010年に廃止になり、新たに「日本年金機構」が事業を受け継ぐことになっています。日本年金機構では、業務の民間委託を進めて、コスト削減を進める予定です。