日本の借金ついに1000兆円を超える | 再生日本21


日本の借金ついに1000兆円を超える

GDPの2倍の借金は返済できるのか?

国の借金 過去最高を更新

小泉自民党の衆議院選挙での歴史的大勝利から間もない9月22日。株式市場は外国人の日本株買いが加速し、平均株価も上昇中。「景気回復」の高揚感がじわりじわりと国全体に浸透し始めていた。しかしこの日、財務省が発表した「国の借金」は小泉大勝の裏でおそるべき事態が進んでいることを物語っている。
翌日の日経新聞に小さなべた記事としてその内容は掲載された。それによると、今年の6月末現在、国の借金はついに795兆8000億円になったというのだ。過去最高を更新したという。
政府の借金の中身を詳しく見てみよう(図1参照)。
一般に言われる「国債」は「普通国債」であり、約510兆円である。先ほど、「2005年度末(2006年3月末)で538兆円になる」という財務省の見込みを示したが、すでに年度開始から3ヶ月の6月末の時点で約510兆円に上っている。また、実際にはこの他に何種類もの「国債もどき」が存在する。表中、普通国債の下には「財政融資資金特別会計国債」がある。これはいわゆる財投債である。以下、「交付国債」、「出資国債等」と続く。そして旧国鉄の債務を引き継いだ「日本国有鉄道清算事業団債券等承継国債」。これらを合わせて「内国債」と呼び残高は約640兆円にのぼる。さらに、「借入金」、「政府短期証券」を加えると合計で795兆円にもなる。大雑把に言って、国債500兆円に加え、国債以外の借金が何と300兆円近くもあるのだ!

【図1】国債および借入金並びに政府保証債務現在高(平成17年6月末現在)
    平成17年9月22日財務省発表





日本が抱える借金の総額はいくらになるのか?

しかし日本の借金はこの795兆円には留まらない。借金漬けになっているのは中央政府だけではないからだ。中央政府だけでなく、私たちが住む都道府県や市町村などの自治体、つまり地方もこれまで積み重ねた債務の返済に迫られているのである。では、いったい国と地方自治体を合わせた公的部門全体が抱える借金はいくらになるのか。
「公的債務」を示す統計として、政府は複数の資料を公表している。その中で、これまで「財政赤字」の問題を説明する際によく用いられているのが、期間一年を超す「長期債務残高」と呼ばれる数字だ(図2)。2005年度末に国だけで約602兆円に上る見込みである。さらに地方政府も地方債などをはじめとする債務を抱えており、これが同じく今年度末で約205兆円となる。この合計から国と地方の重複分である約34兆円を引いたものが「国と地方の長期債務残高」とされ、2005年度末で約774兆円となる。これはGDPの151.2%にあたり、主要国の中でも最悪の水準となっている。「国の長期債務残高」は、将来の負担を把握するために利払いや償還に当てる財源が、主に税金で賄われるものを集計したもので「普通国債」「出資国債」「一般会計借入金」などが含まれている。

【図2】国の長期債務残高

この数字には「政府短期証券」などの短期の債務や、公団や公庫などの特殊法人が発行する「財投債」は含まれていない。一般の家計で、来月返す借金は短期の借り入れなので、借金に含まないということはありえない。「借金」は「借金」である。
そこで短期の借金や、特殊法人が抱える借金なども加えてみよう(図3)。「政府短期証券」が約142兆円。さらに「財投債」が143兆円。これらすべてを合計すると、「国と地方の長期債務残高」774兆円+「政府短期証券」142兆円+「財投債」143兆円=1059兆円。2005年度末で日本の公的部門が抱える借金はゆうに1000兆円を超えてしまうのである。これが「日本政府の借金 1000兆円を超える」といわれる内訳だ。借金1059兆円。これは実に日本のGDP(512兆円)の2倍にあたる。GDPの2倍というのは、恐ろしい数字である。これは60年前、日本が太平洋戦争に負けたときと同じ割合にあたる。こんなに物が豊かになり、食べ物に困ることなどない日本人の日々の生活からはとうてい想像もつかないが、実は国民が背負っているものはとても重い。なぜなら、総額1059兆円の借金を国民一人当たりで割ると、約830万円。産声をあげたばかりの赤ん坊から、老人まですべての人にこれだけの借金がのしかかっている。

【図3】

さらにこれに、公団、公庫、営団などの政府関係機関が発行する債券の「政府保証債務」約58兆円を加えると、1117兆円にまで公的債務は膨れ上がってしまう。



GDP2倍の借金、日本は世界の落ちこぼれ?

日本の公的部門が抱えるGDPの2倍もの債務。国際的に健全だといわれている基準は、GDPのおよそ60%。これはヨーロッパの国がユーロに加盟する条件になっている基準だ。日本の状況、GDPの2倍という数字がいかにひどいものかがわかる。今の日本の状況では、ヨーロッパ圏内であればユーロにも入れてもらえない、落ちこぼれだということだ。図4を見ると日本のここ数年の債務の増え方がいかにひどいか一目瞭然だ。このグラフによると、日本の債務残高の対 GDP比は、161%。小泉政権が発足した2001年との比較で、18.8ポイントも増えたことになる。
また、「政府債務」がいかに世界の中で最悪の水準に近いかを示す数字がある。世界経済フォーラムが発表した「2005年世界競争力報告」で、日本は「政府債務」の部門で117カ国、地域のうち、なんと114位と不名誉な順位に上げられた。報告は「世界最悪の諸国に含まれ、財政的節度が欠如している」と指摘している。

【図4】債務残高の国際比較

かつて(そう遠くない過去であるが)塩川財務大臣(当時)は、日本国債が海外の格付け会社によって格下げされた際に、「日本は世界最大の経常黒字を誇っており、国債の95%を日本人が保有しているため、信用度はもっと高い」と猛然と反論していた。
そこで、日本の経常黒字がいくらあるかご存知だろうか。
日本と海外との貿易、旅行などのサービスの取引状況を示す経常黒字は2005年3月末で約18兆円超。日本の借金1059兆円はその約58倍にのぼっている。さらに、日本経済を下支えしてきた貿易黒字にもこのところ先行きに陰りが見えてきている。直近の2005年9月の貿易黒字額は前の年の同じ月に比べて 21%も減少し、この6ヶ月連続で減少を続けている。理由は原油価格の上昇。さらに円安も留まるところを知らない。この分ではとても、借金の担保にはなりそうもない。
では、日本が借金を返すことができるのか、日本国が持っている資産と比較してみよう。日本が持っている資産は一体どれくらいあるものなのか。それを表す経済指標に「国富」がある。国内の土地、建物、金融資産、在庫、地下資源などをすべて換算した「正味資産」がいわゆる「国富」。企業や政府などの公的部門なども含めて国民全体が所有している資産から負債を差し引いたものだ。国を企業に例えれば「自己資本」に相当する。みずほ証券の試算によれば、2005年度末の資産から負債を差し引いた正味資産は、2710兆円。日本の借金は国内の資産すべてと比較してみても、その40%にのぼってしまう。ただし、この資産の中には、借金の返済に充てられるはずもない、政府の建物や構造物も含まれるため、実際に換金できる資産となると大幅に目減りすることは間違いない。

【図5】1059兆円の借金

次に、塩川財務大臣(当時)発言の2番目、「国債保有者が日本人だから大丈夫だ」という説についてはどうだろうか。日本国債を保有しているのは、国内の金融機関や個人などで、海外からの借金ではないところに、アメリカなど他の国と事情が異なっているのは事実だ。ただし、このまま財政赤字が続けば、日本が国内で政府の借金を賄いきれなくなることは目に見えている。それが証拠に、政府の借金に対する安心材料として引き合いに出される、国民個人の金融資産も正味で見てみると、実は頼りにならないということがわかったからだ。



本当は既に個人金融資産を上回っている

政府の借金の担保として期待(?)されている個人金融資産は約1400兆円といわれる。個人資産が1400兆円あるから1000兆円の負債があってもまだ大丈夫という理屈はよく聞かれる。ただ、この1400兆円という数字は日銀が発表しているものであり、中身を分析すると実質的な資産はそれほど大きくないことがわかる。
では、日本の個人金融資産はどのくらいあるのか見てみよう。図6をご覧いただきたい。図中の「日本銀行資金循環勘定」の欄を見ると、資産合計は1425兆円である。これが一般によく知られている個人金融資産額である。
しかし、個人にも住宅ローンを中心に負債がある。それが326兆円。これを差し引いた額が「ネット」と表示されていて、その額は1099兆円となっている。先ほど検証した政府の借金額1059兆円と比べてみよう。すると大した余裕などないことがわかる。せいぜいプラス40兆円程度のものである。政府の借金増加ペースを考えれば、2年以内には逆転してしまうに違いない。
しかし、この数字はあくまでも日銀の統計であり、実際にはもっと少ないと考えられるのである。国立国会図書館より発表されたレポートによると、国家財政の持続性を考える場合、個人の純金融資産は、負債はもちろん個人事業主の保有分、現金、年金基金を除くべきで、そう考えると相対的には「総務省家計調査」の数値の妥当性が高いというのだ。
図6中の『総務省家計調査』の欄を見ると、資産合計は829兆円しかない。負債の257兆円を差し引くと、ネットは何と572兆円である。個人純金融資産を572兆円とすれば、政府の借金1000兆円には実に400兆円以上も不足する。もはや個人資産では担保できないのは誰の目にも明らかである。

【図6】国立国会図書館 個人金融資産についてのレポート




このままでは、いかに日本の将来が危ないか
ー破綻を裏付ける20年後の試算ー

20年後の日本はこのままでは財政破綻―――ついにこんな言葉が財務省内の審議会ですら聞かれるようになってしまった。20年後の2025年、日本の公債残高はGDPの220%を超えるという試算が発表されたときのことである。今年度末の公債残高は538兆円、GDPとほぼ同じ金額だ。試算によれば20 年後、公債残高は1600兆円、なんと現在の3倍に増えてしまうという。政府の借金は国債だけではないので、公債だけでGDPの220%を超えるとなると、財政破綻は避けられない。実はこの試算は、財務省の財政制度等審議会の部会に提出された資料で、委員自身が「20年先、こういう姿であれば、わが国は財政破綻ということである」と付け加えている。
一般会計の様相も異常である。図7をご覧いただきたい。2005年の現在、10年後、20年後の一般会計を予測しているが、特に20年後の歳入に注目してほしい。公債収入が税収を大幅に上回り、公債依存度が6割を超えている。歳出が増える大きな要因は、国債費と社会保障費である。国債を発行しなければ予算は組めない、発行すればその利払いと返済が付いて回るという悪循環なのである。
基礎的財政収支(プライマリーバランス)は10年後の2015年、約25兆円の赤字。これを均衡するためには、試算結果に比べて歳出を3割圧縮する必要があるという。もしくは消費税の引き上げで歳入を増やす場合には、消費税を19%に引き上げなければならなくなる。さらに20年後には消費税の引き上げ幅は、なんと22%に相当することになる。
ただし、ここで付け加えておくが、この試算の前提となっている長期金利は、2008年までが現在とほぼ同水準の1.9%、その後は3%だ。この前提以上に金利が上昇すれば、状況はもっと悪くなる。例えば、金利が1%上昇したら、3年で4.4兆円も国債費が増えるというデータがある。たった3年後でこれだけ影響が出るのだから、10年後、20年後金利が上昇したら、それだけ国債の利払いにかかる費用も増えることになる。さらに、これは一般会計だけの試算であって、地方やその他の公的部門の借金は含まれていないのだ。

【図7】国の一般会計に関わる長期試算の結果





国民負担を増やすためのアピール

政府は構造改革を進めることで、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)が2012年度にはプラスに転じるとしている。しかし、上記の試算を元にすると、生ぬるい財政改革でとても追いつく金額とはいえないことが明白だ。先ほどの試算ではじき出された削減の比率、歳出の3割を削るほどの改革が果たして可能なのか。
冒頭、財務省が広く国の窮状を国民に訴えていることに触れたが、その理由は、やはりこのまま行けば、消費税の負担や社会保障費の自己負担が避けられないからに他ならない。国の財政を立て直すために、個人の家計が圧迫される方向に向かっているからである。来年以降、五月雨式に減税幅が減らされたり、国民年金の保険料が引き上げられたりする予定だ。
一方で、国は「個人向け国債」を大量に売り出し、「安全な資産」だとしてアピールしている。自ら財政危機をキャンペーンで訴え、「借金で火の車だ」と言いつつ、もう一方で「赤字でつぶれそうなところにお金を貸しなさい」、「日本国債をもっと買ってください」というのは、大いなる矛盾である。 この夏の個人向け国債のポスターのキャッチフレーズは皮肉にも「10年先まで楽しみたい」。だが、とても日本の10年後に楽しい未来を描けそうもないことは、数字が物語っている。

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